彼女は大きなおうちで一人暮らし。
大きな庭には築山があり、植木はいつも整えられ、落ち葉一つ落ちていない。
それは毎日早朝から彼女が掃除をするから。
二重に折り曲げたその体で、上手に箒と塵取りを使ってゆっくり
隅々まできれいにする。
着ているスカートは、彼女が若い頃自分で縫い上げたもので、ファスナーが上がらなくなっても家で大切に着ている。
8:45分ヘルパーさんがやってくると彼女は一段と忙しく支度をはじめ出掛ける。
今日はスーパーへ、今日は病院へ。
「お惣菜も買って、パンパンちゃんも買って、お昼に頂くの」
「卵をね、湯がいて毎日食べなさいって、だから自分で湯がいてデイサービスに持って行っていただくのよ。フフフ。」
彼女の言葉はいつもきれいで、相手を思いやった表現。
「もう90だからね、忘れちゃうのよ~。困ったものよねえ。悪気はないんだけど言いたい放題。フフフ。あなた、誰だったかしら?お世話にばかりなっちゃって、お見捨てなくねえ~(*^^*)」
彼女の優しい人柄や物忘れについての本人の捉え方は
物忘れを苦にせず生きている先駆者だ。
パンパンちゃんを頂くと、今度はデイサービスが迎えにくる。
「いつもお世話になります~。今日も宜しくねえ~。」
「今日は夕方、宗教の勧誘の人がご仏壇に手を合わせに来て下さることになってるのよ。え?入れちゃダメ?お話して帰って頂くだけなのよ?え?娘が嫌がってる?そうなの?
悪い人ではないんだけどもねえ。」
「昨日いらない靴を譲ってくださいって電話があってねえ、今日はデイサービスだから、木曜日にお約束したの~。時間?お昼前にねえ~。え?あなたも来るの?ケアマネさんも?まあ、いらしてもらえると嬉しいぃ~(*^^*)」
あまりにすごい来客が多すぎて、警察の方に相談し、県外におられる娘さんに連絡をして、電話を防犯用に取り換えさせて頂いたことです(*^^*)