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【基町悠吉のつぶやき28 目から鱗;家族介護者から教わったこと】

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ケアマネージャーとしてお仕事させて貰うと、こちらからお伝えできる事は少なく、ご家族やご本人から教わる事の方が多いとつくづく感じます。

お母さんを懸命に介護されているMさん。
約3年前、お母さんが退院された所から、Mさんの介護が始まりました。
最初は慣れないオムツ交換に四苦八苦され、追い打ちを掛けるように、気管支炎やインフルエンザの発症等お母さんの体調も安定せず、Mさんにとっては辛い時期が続きました。

少し落ち着かれたのは1年も経った頃でしょうか?
「腹が立つ事も有るけど、お陰さまで慣れました。」
介護者教室に行かれたり、家族会に参加されたりと、介護について積極的に学ばれるようになられました。

2年目を迎えようとされていた頃、一つ目の出会いがありました。
某国営テレビでのドキュメンタリーで、食事介助のエキスパートである看護師が取り上げられた事です。
食事の際の姿勢は意識されていたMさんでしたが、ティースプーンで少量ずつ食事介助するプロフェッショナルの姿に衝撃を受けました。
「私はカレースプーンで食べさせてた。
 『カレースプーンを使っちゃ駄目』ってテレビで言われてて、驚いた。
 カレースプーンで食べさせてる時、姪がびっくりして『そんなに食べさせて大丈夫なん!?』と言ってたけど、『ええんよねー』と答えてた。
時間が掛かってもちょっとずつ食べんといけんのんじゃね。」
以来、スプーンを換え、時間を掛けて食事介助をされています。

さらに3年目の近づいてきた頃、二つ目の出会いがありました。
今、話題のユマニチュードです。
「見る」「話す」「触れる」「立つ」の基本にする、認知症ケアの方法です。
知識として知ってはおられたけど実戦した事は無かったMさん。
信頼する訪問看護の方から「今度ユマニチュードの講演会に行くの。」と聞いたMさんは、そのユマニチュードの講演会を取り上げたニュースを何気なく見ていました。
その夜、なかなか水分が摂れず、10分も20分も水を口に含んでいるお母さんに対し、ユマニチュードを実践してみようと思われました。
目と目を合わせて、「お母さん。ゴックンと飲み込んで。ゴックンよ。」と声掛けすると、嫌がっていたお母さんが飲んでくれました!
この経験から「もっと知りたい!」と思っていたその日、訪問看護さんが入門書を持っておられ、探していたのはコレコレと直ぐ購入されたそうです。
この一連の流れを「奇跡の出会い」とMさんは表現します。
そこから入門書を読んで勉強中。
「今まで母を物扱いしていたのだなと反省しました。」
「母の力を奪っていたんじゃないか?」
「ユマニチュードの実践でお母さんが元気になるのではと希望を持てた」
と言われています。

恥ずかしながら、ケアマネジャーは二つともMさんに教えて頂きました。
いつも勉強熱心なMさんにただただ頭が下がるケアマネジャーでした。