「最期は、ここ(入院先)から高天原へ直行だね…淋しいけど仕方ないね…」入院先で、私に漏らされていたY様。
身寄りも無く、入院中何度かこの会話が繰り返されました。大変心細かったのだとお察ししました。
以前、数回ショート利用をされ、職員の名前や顔を覚えて下さっており、「皆が待ってくれてるなら行くよ」と
『終の棲家』として悠悠タウンを選んで下さり、4日前にご入所されていました。
誤嚥性肺炎で約3ヵ月病院で過ごされ、疾患へのリスク回避から経口摂取が制限されていました。
在宅時から寝たきりの状態が5年以上続いた生活の中で、食事や嗜好品を楽しみにされていた方でしたから、
「好きな物を好きなだけ食べてみたい」との思いは痛いほど伝わってきました。
入院先からも許可を頂き、「施設での看取り」の覚悟で入所して頂きました。
入所後は食事も少しずつですが召し上がり、大好きなアイスクリームも久しぶりに口にされ、大変喜ばれたとの事。
最後にお休みになる前、ジュースもトロミを付ける事無く、ゴクゴクと美味しそうに召し上がったそうです。
家政婦さんやヘルパーさんとして東京や広島で長年勤められ、6年前の骨折から、寝たきり状態になられていました。
そんな状態で街中のアパートで独居、5年前に私が初めてお会いした際も「お独りでどの様に生活されているの?」と驚いた事を
今も鮮明に覚えています。
一日2回の訪問介護、週3回のデイサービス。訪問看護さんにも助けて頂きました。スタッフさんに会うのを大変楽しみにされ、
冗談や優しい言葉をよく掛けて下さいました。
とても愛された方で、夜中に淋しくなって各事業所に電話をかけられた際も、優しく対応して頂いていました。
『お別れの会』は、施設内の地域交流センターで行われました。前日から安置され、会の当日にお別れの出来ない職員や、
在宅時関わって頂いたスタッフの方も寄って下さり、写真やお花を御棺に入れて下さいました。当日は多くの職員が参列し、
御坊様から御経も上げて頂き、お見送りさせて頂きました。
御坊様から「最期の場所を探してこちらに来られたのでしょう」とのお言葉を頂いた時、短い時間でしたが来て頂いて良かった、
と実感しました。
自宅で独りで亡くなる事が珍しくない時代になり、御葬儀も無く荼毘に伏される方も多くなって来ていると伺います。
身寄りの無い方も、この様な形でお送りさせて頂けた事は、特養の新しい使命と感じました。 基町居宅 岡野