長年、私たち夫婦は紳士服洋品店を営んでまいりました。
陽気で話好きな夫は仕入れや営業を担い、私が店を切り盛りし二人三脚で仕事に励んだものです。
夫は人との出会いをとても大切にし、皆様と語らうことを喜びとしていたようです。
平成九年に体調を崩すまでは商店街の会長を務め、地域の方に支えられながら、
地域振興や神社の大祭などに取り組んでおりました。
祭りの宴で楽しむ夫の、豪快に振舞う姿が今も目に浮かびます。
三人の娘にとっては、優しく頼れる父親でもありました。
成長した娘たちがそれぞれ温かな家庭を築き、安堵していた夫。
療養中に孫たちと風船遊びをしていた、和やかな時間が偲ばれます。
平成22年12月21日、Oさんが79年の生涯を閉じられ1ヶ月が経ちました。
上記は先日奥様から伺った話です。
家族の胸にかけがえのないものを残してくれましたと、涙を浮かべておられました。
今回の話をブログに掲載させていただきたいとお願いしたところ
「賑やかなことが大好きでしたので、夫も喜ぶと思います」と快諾して頂けました。
挨拶など声をかけると「オイッ」という威勢が良く力強い返事を返してくださっていた
Oさんの姿が今でも鮮明に思い出されます。
悠悠タウンのケア方針の1つに、「歴史的・社会的な視点を大切にして援助する」というものがあります。
歴史的とは本人の現在の存在は、長い歴史の中の一場面であるということです。
社会的とは本人を取り巻く環境も含め本人であり、要介護者となっても地域社会の一員であるということです。
ADLや症状にのみに着目しがちですが、家族の温かい言葉に触れ、
改めてお年寄り自身を見ること、向き合うことが私たちの仕事であることを考えさせられました。