ある日、同居の弟から職場に電話がかかり、陽性になったと聞く。
我が家は玄関が一つの二世帯住宅で、平素は弟に会う事は殆どない。
しかし、同居家族は濃厚接触者だ。
全てを仲間に託して自宅へひきこもる。(ごめんね、ありがとう!)
1階には80歳を過ぎた両親と小型犬と私が住んでいる。
母は介護保険のヘルパーと訪問看護を利用しているが、全てのサービスが止まり、家族だけで乗り切らなければならないことを改めて実感した。
籠城が始まり、野菜はすぐに底をつき始めた。
友人にお願いして1週間食べる野菜を買い出しに行ってもらい玄関の外に置いてもらった。
母の陰性が抗原テストで確認できた次の日、PCR検査で父が陽性と分かる。
自室での自粛をお願いし、好みの食事を作っては運ぶ。父のコロナは2日後には咳をするようになり微熱も出たがそれきりで軽快に向かった。既に野菜は底が見えて来ていた。
トイレは共有なので、共有部分はマメに掃除と消毒を行った。母は要介護で毎回綺麗に手を洗うことは不可能と考え、ビニール手袋を毎回つけてトイレに向かわせた。
12日間の濃厚接触者の自宅待機時間に絨毯やカーテンを洗濯し、大掃除を行い、ン年も積み上げたままの本を整理し棚を拭き清めた。
菌は埃があると溜まりやすいと聞いたことがあるからだ。掃除は一石二鳥だった。感染対策と閉じこもりによる運動不足の解消。
キッチンを磨き、床を磨く。
これで少しは運も開けるに違いないと、風水の雑誌を見ながらせんべいをかじった。
我が家は幸運なことに家族は軽症で済み、生活が大きく変わることはなかった。
友人に助けられて通常と変わりない食事をとることもできた。
(ほんまにありがとねえ)
母と私は感染しなかった。
私たちにできる事は、コロナを前にするとわずかだ。
けれど保健師さんたちが電話でつながっていることが、SNSがつながっていることが、心を支えたように、何かできる事があるかもしれないと思う。